ソンドレ・ラルケ ランキング!

ソンドレ・ラルケ HEARTBEAT RADIO

1stの渋さにポップさが加わった大傑作。コステロ魂を感じるM2、プリファブ愛が炸裂するM3、ママキャス(の曲)のように可愛らしいM8、中でもボーナストラックのM13は今作でも数曲ストリングスを手掛けるショーンオヘイガンの前身バンドマイクロディズニーのような静謐な狂気すら感じる。「君は言葉、僕は音楽」とさらっと言ってのける彼はやはり天才なのだろう。 HEARTBEAT RADIO 関連情報

ソンドレ・ラルケ ザ・ロッホ・ネス・マウス

ロッホ・ネス・マウス、ネス湖のねずみというスコティッシュ趣味の名前ですが、その正体は北欧はノルウェー出身のバンドです。1992年に結成された彼らは、パーフェクトポップやローズマリー等の優良レーベルから作品をリリースしている知る人ぞ知る古株バンドで、オリジナルとして5枚目のアルバムになるこの『ロッホ・ネス・マウス』で遂にタイトルにバンド名を冠した通りの自信作に仕上がっています。同アルバムでの楽曲はほぼアレシャール兄弟が、歌詞は兄のオーレ・ヨハネス・アレシャールが手掛けています。現在は弟のヨルンはバンドの裏方役に徹しているため、実質は兄を中心としたバンドで、ほとんど髭面の男性メンバーに一点のクリスティーナを含む男女六人組のバンド編成です。ノルウェーは首都オスロにあるクリスチャン・エングフェルトのスタジオで2014年1月から2015年11月にかけて録音されたものが中心で、恐らくかつてのメンバーで現在はセレナ・マニッシュで活動しているエミル・ニコライセンの紹介だと思われますが、過去にエピック・サウンドトラックスやルイ・フィリップのエンジニアやプライマル・スクリームのミックスを手掛けたニック・テリーが本作品のミックスを担当しています。長い活動歴を活かした人脈を駆使して作り上げた珠玉の全11曲に、日本盤のみボーナストラック1曲が追加されたアルバム仕様になっています。とにかく聴いて確かめてもらいたい、正しくプリファブ・スプラウトの上澄みを掬ったような清々しさと品の良さを併せ持った一貫性のあるサウンドです。流行を気にしない趣味的に洗練されたポップな楽曲の中でも、彼らの会心の一曲になるであろう冒頭の「ウォーム・サーキットリー」はプリファブなレシピを2分45秒に詰め込んだ、ファン悶絶の曲展開に仕上がっています。その熱心な探究心とここまでプリファブの降臨したサウンドなのはもう見事と言うしかありません。ゲストにハリーズ・ジムの一点アンネのサポートを得ています。続くソンドレ・ラルケの参加した「リストア・マイ・イアーズ」は現代的なジャズスタンダードという趣で、ストリングスのアレンジに、スフィアン・スティーヴンスも参加したダニエルソンのヨシュア・スタンパーを迎えた意欲作です。後半の「トリステッサ」でも甘美な演奏を聴かせるヨシュアの指揮する弦楽四重奏団の面々は、つい最近のアルバムでキム・ヨーソイがカバー担当したトッド・ラングレンのアルバム『ランダンス』での人脈を活かしたもので、リンドストロームと共にトッドと連名のエミル・ニコライセンは再度の紹介になりますがロッホ・ネスの過去メンバーだった縁があります。ノルウェーの片田舎でほのぼのと演奏しているアルバムの先行映像も必見の春色のナンバー「チェリー・ブロッサム・イン・ジャパン」、スタイル・カウンシルのようなニュアンスを付けつつもプリファブも匂わせる流れが素敵です。日本ではオムニバス企画『ネオ・ブルー・アイド・ソウル』の続編にも収録され、彼らの窓口となる軽快なポップソングです。ロッホ・ネス旧作に参加したホーヴァールのアップライトベースが光る「シンプル・ソング・フォー・ア・ブックストア」はシンプルなジャジーアコースティック。そして「プリテンド・イッツ・ノット・ソー」は『スティーブ・マックイーン』の蒼さを偲ばせつつも現代的に聴かせるポップスに仕立てています。ある意味で彼らが時折見せる90年代的な北欧ポップスの柔和な表情も出ています。サックスにはロッホ・ネス旧作にゲスト参加したトースタインが華を添えています。後半の「レイン・チェックス」はスティーリー・ダン的なアプローチのロックナンバー。ライナーによればトッドの『ニアリー・ヒューマン』のギターサウンドをイメージしていたとのことですが、抜擢されたオーレ・ブールードがその世界観を後押ししています。清潔な音の揺らめきが心地よい「エポキシ」、珍しく弟のヨルンのギターソロが入ります。アルバム最後を飾るのは、ジャック・ケルアックのビート小説に影響されて作られたという「トリステッサ」、後半にヨシュア指揮のストリングスの響きが余韻を残します。ラストの日本盤のみボーナスのアウトテイクはしっとりとしたアコースティック小品です。アルバムのサウンドだけでなく内容の方もプリファブを意識しているのかフランク・シナトラを歌に入れたり、歌詞にドラ・マールやジャック・デリダを忍ばせていますが、パディ趣味を漂わせたマニアな遊び心からジャケット裏にT・S・エリオット『荒地』の引用句が掲載されていて、その傾倒ぶりを覗かせています。地味ながらアルバム通して所謂捨て曲がなく、どの楽曲もよく練られた内容の、若さゆえの性急さのないベテランによる落ち着いた上品かつマイルドな北欧特有の音楽を指向していて、この時代には貴重で良心的な音楽です。プリファブ・スプラウトを始めとする80年代の英国作品を普段から聴いている音楽ファンにとって彼らの音楽は2016年の少し明るい話題となるのは確実で、聴き込むほどに新たな発見のあるアルバムのように思われます。尚、帯付きの日本盤の解説には宮子和眞さん、歌詞と対訳付きです。 ザ・ロッホ・ネス・マウス 関連情報




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