危機に直面している日本の大学: 新自由主義と大学ガバナンス (合同ブックレット)
本書で扱われている「大学改革」とは2000年以降、21世紀になってから新自由主義路線に乗って進められているものを指している。本書では、この大学改革によってもたらされている負の側面を、6人の大学教員が説いたものである。構成としては、緒言の後に5章続く。この緒言と各章をそれぞれ1人の執筆者が担当して書いているかたちになっている。高等教育改革の経緯や背景、現在の第2次安倍政権の国家戦略としての大学改革、国立大学法人化による国立大学の構造転換、公立大学の現状、私立大学の現状というトピックから書かれている。いずれの章でも、扱われている内容は異なっても、各著者の「スタンス」は共通している。すなわち、新自由主義に基づいて進められている現在の改革によって、競争や予算の傾斜配分や人員削減などが起こり、現場は疲弊し、「強い大学」はますます強くなり、「弱い大学」はますます弱くなっているといった現状を報告し、「危機に直面している日本の大学」を報告している。ただ、本書を読んでいて一番気になるのは、現在の改革に対する対案がほとんど出ていないことである。昔のままの大学でいいかと言えば、これだけ少子化が進む中で大学数が増え、現状が変わってきているので、新たな大学のあり方が求められるのは間違いないだろう。実際、小学校でも中学校でも高校でも、2000年以前の姿とはかなり変わってきている(変わらざるを得ない)わけであり、著者たちがえがく「理想の大学像」も語ってほしかったとも感じてしまった。教育格差、大学間格差、都市部と地方の格差を助長する現在の教育改革は大きな問題を抱えていることは分かる。そこを指摘した本書から学ぶべきことも多いが、では大学人としてどうしたいのかについても語ってくれれば、健全な議論が可能になったように感じる。 危機に直面している日本の大学: 新自由主義と大学ガバナンス (合同ブックレット) 関連情報
本書は、日本の国家戦略を提言している。福田氏によれば、世紀の初頭に、国民の100年間の運命を決める大事件が起こる。例えば第1次世界大戦で、世界覇権が米国に移った。だからアジアの覇権を中国が奪う大事件の可能性もある。しかし私見であるが、中国と米国は日本のために存在しない。ただし中華帝国は、米国以上に日本人の大量虐殺を公言している。だから日米共同で、中華帝国に対抗すべきなのか?本書は、そのことに直接の言及は無い。しかし(滅亡の原因は自己決定の欠如であり、)新憲法制定と有事法制の制定を匂わせていると思う。そして紋切り型の「日本帝国主義説」は日本封じ込め政策であり、かつ第2次日中戦争はアメリカに一石二鳥である。だから現状では、最強のアメリカの属国から同盟国への硊行が無難である。 福田氏の提言は主に2つである。第1に日本製品の購買キャンペーン、第2に東南アジアとインドとの同盟による中華帝国への牽制である。なぜならヤオハンが良い例だが、中国に技術移転した日本企業は大損する。中華に契約を守る誠実な文化は無い。だから十年後に日本をだました中国は、輸出攻勢で日本企業を壊滅させる。例えばソニーのプレイステイション2の中核半導体は、北京で製造されている。日本の製造業が壊滅しないためには、日本人が日本製品を買う必要があるのだ。そして諸説あるが、21世紀に中華帝国が、経済的・政治的に成功をおさめアジアを支配する可能性もある。私見だが、西欧のように共通の文化を共有できない東南アジアと日本を結びつける糸は、アメリカ帝国と中華帝国の脅威である。そして東南アジアとインドとの同盟のために日本は、憲法改正と有事法制を成立させ、世界最強のアメリカの属国から同盟国へ移行する。そして中国が分裂したら、アメリカを先頭に、中国を日米で共同管理すべきだ。 新・世界地図―直面する危機の正体 関連情報
読売新聞に2013年9月から2014年2月にかけて断続的に掲載された連載「政治の現場」から、日中韓に関するものを元に、大幅な加筆修正を行って一冊にまとめられた本である。新聞社らしく、扇動的な記述よりも事実の列挙によって読者に判断材料を与えることを原則としたということで、確かにそのような内容となっている。第1章 日中冷戦第2章 尖閣烈々第3章 冷え切る日韓第4章 日米同盟と沖縄第5章 見えない戦争感情的な記述はほとんどなく、淡々と具体的な出来事や事実を並べてあるので、かえって説得力がある。日中、日韓、さらに米国との関係といった、近年の日本周辺の出来事のおまとめ的な読み方もできる。上記のように全部で5章構成になっているが、そのうち一章を丸ごとサイバー戦に特化させているのも本書の特徴のひとつであるといえ、重要さの認識や技術面や体制に限らず法整備などにおいてもこの分野の日本の対応の遅れが指摘されている。あとがきにおいて、朝日新聞が連載を元にWEB新書化した本を取り上げて批判を行っているところも、分量的にはわずかだが目を引く。ただ、抑制したトーンで事実をきっちりまとめている点では大変良質な仕上がりであるが、では今後日本は何をどうしてゆけばよいのか、どう対処してゆくべきなのか、という点についてはほとんど書かれていない。過去と現在の情報は充実しているが、未来については避けている。もちろん、事実中心に書かれた本書の趣旨から考えて恣意的な主張は不要だろう。しかし、ひとりひとりの国民の意識の深くまで根付いている中国と韓国の反日や領土領海への野心が消える日は今後も当面考えられないことは断言してもよいだろうし、中国の軍拡がまだ続くことも確実視してよいだろうから、その前提に基づいて、日本が過去の外交上の失策から何を学んでどう生かすべきなのか、本書にも詳しく記載のある反日プロパガンダやジャパン・ディスカウントに対してどうしてゆくべきなのか、中国の軍備増強や脅威に今後どう対峙してゆくべきなのかといった、本書に紹介されている事実や課題への良識的な範囲での今後の提言くらいは行うべきだったのではないかと思われる。 「日中韓」外交戦争: 日本が直面する「いまそこにある危機」 関連情報