吉村萬壱 ランキング!

吉村萬壱 虚ろまんてぃっく

この作品群は、現代文学に風穴を開ける力がある。今年のベストワンです。(^_^)v 虚ろまんてぃっく 関連情報

吉村萬壱 ハリガネムシ (文春文庫)

悪を描ききった作品。との帯だが個人的にはそうは思わなかった。単純に「人間」を正直に描いた結果が、悪に写るのではないか。第129回芥川賞を受賞とのコトだが、芥川賞らしい作品と言うべきか。内容は、「ハリガネムシ」「岬行」の二作品からなるが、やはり強烈な印象を残すのは「ハリガネムシ」の方。教師である主人公は、ソープランドで知り合ったサチコと、ほぼ済し崩し的に同棲生活を始め、徐々に異常性を増していく。次第にエスカレートする暴力への衝動は、自殺未遂の手首の傷に自ら指をもぐらせ、穴をうがつ、といった行動に発展する。主人公はじめ、登場人物の異常性のみが目立つように感じるが、なぜかそれが自然の行為のように感じてしまう。それは単なる「悪」ではなく、人間の根本的な欲求や行動を描いているからかもしれない。正直、気分が悪くなる小説ではあるが、単なるエログロとは違う、「人間」というものを考えさせられる作品。個人的に読んで良かった作品だと思う。 ハリガネムシ (文春文庫) 関連情報

吉村萬壱 臣女

『ハリガネムシ』で知って圧倒され、『クチュクチュバーン』で圧倒され、『人間離れ』でつくづく圧倒された、その作家だが、本作がまた凄い。怪奇小説と呼ぶならバリバリの怪奇小説、もっとうなずける名前で言うなら化け物小説で、単純にそれだけとしても奇想天外の面白さにうなる。が、そんな名前で呼び捨てにしてしまえないのは、第一級の人間観察が優れた筆遣いでギッシリ詰め込まれているからだ。一級の人間観察、つまりありふれた「ヒューマニズム濁り」のない目による生物的な、と言って適当かどうかは不明だが、動物植物鉱物静物死骸を見るのと均等またはそれ以上の目による、人間の正確な観察、人間が社会の中で、外で、表す習性と意味不明の癖までを精密に捉えて学ばせてくれる観察です。その結果として、化け物がいつの間にか我が身に、狎れ合うことのない節度を保ったまま添うてきて、やがて化け物の人間性と人間の化け物性が不可分に絡み合うその中で語られているのは、あるがまま当たり前のという意味で「正常な」人間の、当たり前ありきたりのという意味でなく「正常な」物語。その正常な物語が息をつかせぬ緊張の連続、かつ、化け物小説だからと言って決して漫画的でなく最近読んだ中で最も詩的と言ってよい、つまり文学的ないしは表現技術面からの示唆にも富んだ、そんな作品です。その点でもピカイチ、女流文学賞と紫式部文学賞以外のどの賞をとってもおかしくないかという種類の面白さ、濃さだ。 臣女 関連情報




Loading...


ここを友達に教える