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津島佑子 火の山ー山猿記(上) (講談社文庫)

谷崎潤一郎賞を受賞したからそう感じるのかも知れませんが、何となく「細雪」を思い出しました。この作品の中でも、照子、笛子、杏子、桜子の四人の姉妹が、それぞれの性格の違いを的確に表現しつつ、「有森家」の「女」としての生き様を見事に表現しています。その強さは、火の山(富士山)や石に代表されるような「大地」や「自然」のそれのようです。前半部分では、家に残って職業婦人として「家」を守っているのは笛子であり、後半部分の戦時の動乱時を支えるのは桜子です。その己を捨てても「男」を立てて「家」を守ろうという気迫や、その為には、何でもするという一途さが彼女たちの強さでしょう。それに比べて、「男」たちの弱さはどうでしょうか。笛子の夫杉冬吾のナイーブさと言っていいような弱さは、酒に逃げて重大事を先送りし、ついには笛子との「愛」にも耐えられなくなってしまいます。「有森家」を守るべき勇太郎にしても、桜子や笛子の助けなしには、何も出来ません。その女性たちの「強さ」の極致が、桜子の出産として描かれます。医者に何と言われようとも、女性としてどんなことがあっても子供を産むのが当たり前であり、それは自分の命を賭しても惜しくないものだと認識されています。むしろ、ここにこそ女性の強さの原点があるのかも知れません。 火の山ー山猿記(上) (講談社文庫) 関連情報

津島佑子 火の山 山猿記(上) (講談社文庫)

「純情、きらり」を見て、原作が是非読みたくなり、上下を1週間で読破しました。戦中、戦後のどうしようもない時代に、夢をあきらめ、恋人とも別れなければいけないのに家族のため、兄弟のために一生懸命に生きる女性たちの姿に、感動しました。桜子をせめて幸せにしてあげたかったな。 火の山 山猿記(上) (講談社文庫) 関連情報

津島佑子 黄金の夢の歌 (講談社文庫)

これは一見、旅行記のような作品である。もちろん、そういう楽しみ方も充分に出来ると思う。少なくとも私はこれだけ面白い旅行記を読んだことはないし、行ったことも見たこともない土地の空気をくっきりと浮かび上がらせる筆力はさすがという他ない。しかし、私が魅了されたのは、そこに描かれた人々だった。これまで何十年と生きてきた中で背負ってきたものもあるけれど、好奇心でやや前のめりに歩いていく主人公の姿が目に浮ぶ。ストーリーの奇抜さで読ませる小説が増えている中、小説とは自分以外の誰かと出会うものであったと気付かされた。 黄金の夢の歌 (講談社文庫) 関連情報




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