沢村忠の登場で頂点に達したキックボクシング人気にあやかった、いつもの仇討ち劇。健さんのキックボクサーとしての蹴りを見ているとこの人は相当体が固かったと見える。まったく足が上がらない。体型的には逆三角で締まっていて超カッコイイんだけどね。沢村にしてもさすがにプロなんだが、今見るとあんな蹴りでよくムエタイに勝ててたなと思うくらい。まあ当時から沢村と戦うタイボクサーは三流選手と言われていたけどね。本物の一流ムエタイ選手だったらほぼ勝てないのが常識、体のしなやかさが全然違う。映画だから上手く撮っているが、試合のシーンはご愛嬌です。やはり健さんは長ドスを持って暴れてこそサマになる。それに比べて文太の兄ィはホントいい所無しですわ。完全に引き立て役に回っちゃってる。文太ファンは観ない方がよろしい。名匠マキノ雅弘監督だけあってシーンの繋がりに丁寧さとメリハリがあって実に自然。放火で家を焼かれた元テキヤの親分(流しの元締め)がかつての子分の所に殴り込みに行き、不意打ちを食らわす場面などは迫力がある。映画作りの円熟した職人技が見られる。しかしこの映画に限らないが、健さんの行く所、常に死人の山というのはどうかなあ。健さんも自分が死神化するのが嫌で東映を離れたんじゃないか、などと思ってしまう。 ごろつき [DVD] 関連情報
テレビドラマ化が2回(NHKとTBS)、映画化が1回されているが、NHKで放映された本作はテレビドラマ史に残る傑作中の傑作(第一シリーズと第二シリーズで合計9話)。主役は水田仙吉役のフランキー堺さんと門倉修造役の杉浦直樹さんなのだが、強く印象に残るは仙吉の妻・たみ役の吉村実子さんとその娘・君子役の岸本加代子さん。一時半ば引退同然だったが吉村さんは本作で本格復帰。特別に美人でもない、ごく平凡な主婦が、夫の親友で、押し出しも立派な何不自由ない男性に思いを寄せられ、揺れ動く女心を巧みに表現している。また、岸本さんが昭和初期の庶民的な家庭の日常に見事にとけこんでいる。 あ・うん [VHS] 関連情報